四季・旅・愛〜芹洋子ファンサイト  

「青春の旅〜日本の抒情」
フル・オリジナルナンバーの名作

 
■「青春の旅〜日本の抒情 芹洋子」 写真 寺島照夫 キング SKA-184 1977(レコード)
                                         KICS 8185(CD)

レコードジャケットより

このアルバムは1977年発売の全曲芹洋子さんオリジナル吹き込みのアルバムです。
全作詞をファーストアルバム「秋の砂山」以来、長年芹さんも歌い込んできた木下龍太郎さんが手がけてます。
作曲はこの道では抜群の憂いを感じさせるメロディを作っておられる小川寛興さんと、フォーク・ニューミュージックでも名作を書かれる一方、「四季の歌」以来芹洋子さんとは抜群の相性を誇る、荒木とよひささんのお二人。
全体としては日本全国から12カ所を選び、旅にまつわる感情と季節の移ろい、ある時は恋人との、またあるときは家族への愛を謳った情感溢れる曲が揃っています。
 
曲は春の訪れを告げる足摺岬を歌った「早春岬」から始まり、「明日はあなたに返事を持って帰ります」と結びハッピーエンドを予感させながら終わる「安曇野」まで日本人の持つ暖かい情感に溢れた傑作アルバムだと思います。
つばめは是非このアルバムを芹洋子さんの仕事の金字塔として、より多くの人に聴いて欲しいと思います。

またこのアルバムは聴く人によって、多くの年代の人にそれぞれの受け入れられ方をするように思います。30〜40代以上の人には愛唱歌、またはカラオケのレパートリーとして、学生やママさんコーラスには合唱のレパートリーとして打って付けですし、歌われている地域の人々やお役所関係には観光の目玉に一役買いそうですし、歌碑の建立にも打って付け・・・・って、これは実際「サンゴ草咲く日に」の舞台、能取湖に歌碑が建ちましたが、本当に日本の12カ所にそれぞれ歌碑が建ってもおかしくないほどの曲の数々です。


●「早春岬」(土佐・四国)
自殺の名所として今日ではその名が通っていますが、詩の方はそのイメージを否定して「春が一番早く来る」「幸せが生まれる」岬ですと歌っています。荒木とよひささんののメロディは冒頭の「悲しみ岬と・・・」からグッと引きつけてくれる感じで、オープニングを飾るにふさわしい美しい曲です。

●「大和路」(奈良・近畿)
「遠い別れ」「旅のはてなくて」の言葉に、過去から遙かに続く時を想います。小川寛興さんに変わった曲はグッと渋くなり、大和路のほの暗く悠久を感じさせるイメージをそそります。

●「倉敷川」(倉敷・中国)
荒木とよひささんの曲ですが、グッとこちらも渋めになります。どこか日本の古謡とも感じかねない冒頭のメロディ。倉敷の古い町並みを歌った後に恋人を置いて一人旅をしている女性の寂しい思いが語られます。

●「妻籠宿」(木曽・中部)
このHPのコンテンツ「旅にでたい」でも妻籠に行った旅行記に書きましたが、旅する女性が妻籠宿の旅館から見聞きする旅籠の情景が語られています。「夜明け前です 妻籠宿」と島崎藤村の作品を確信犯的に持ってくる詩にニヤリとし、民謡風なそのメロディを持ってくる小川寛興さんの手管に心地よく絡め取られる快感を味わいます。

●「津和野にひとり」(津和野・中国)
森昌子さんの歌に「津和野ひとり」という曲がありましたが、こっちの方が早いんですよ。まっそれはそうとして(^^;)
小川さんらしい日本情緒あふれる柔らかいメロディです。「白壁の掘り割り」「菖蒲咲く」「錦鯉」「乙女峠」など、津和野のイメージを喚起する言葉を取り上げて、そこに失恋の傷を癒しに来た女性の姿を重ねます。

●「二輪草」(尾瀬・関東)
尾瀬といえば水芭蕉が有名ですが、ここでは二輪草が主役。二輪草転じて恋人との「二人」を暗示し、「教えてください一里塚」で現在は別れて一人の状態を暗示させる、言葉遊びとも言えるおつな詩になっています。失恋の歌ではありますが、荒木さんの悠々としたメロディは悲しさだけでない感情を見せます。

●「青春の旅」(能登・金沢・北陸)
明るい表情とテンポの一曲。「青春になにか形見を残したくて」と歌うこの曲は、つばめにとっては芹洋子さんの「旅」のメインテーマ曲という感じです。能登・金沢の風物・風景を次々に織り込んだ詩は、まさに旅情を誘う最強の一曲です。
 
●「サンゴ草咲く日に」(能取湖・北海道)
先にも書きましたが、2003年にこの歌の歌碑が現地に建立されました。まさにこのアルバムの「正しい使い方」そのものでしょう。北海道の湖はこれまでも阿寒湖・摩周湖・サロマ湖・洞爺湖など歌にされてきましたが、能取湖というのが新鮮でした。
しかしこのサンゴ草の一面の赤い絨毯の景色はまた他にはたとえようのないすばらしさだそうです。歌碑のおかげでつばめもステージで実演を聴くことができた曲でした。

●「朝市の町」(飛騨高山・中部)
珍しくこの曲の詩は、ふるさとの母親を想って歌う曲です。「みそしるを熱めに暖めながら母の帰り待っていた」という一節には母親との寂しい生活の一風景を想いだし、またそこにある暖かい感情を思い胸が熱くなるほどの詩の世界です。
 
●「風たちはいま」(鳥取砂丘・中国)
ピアノの伴奏で始まり、悠々とした長めの音符で歌い出すこの曲はどこかスケール感のある曲です。大きなオーケストラを入れても面白いのでは、と思いそんな編曲を聴きたくなる一曲です。風が砂丘の砂を飛ばして、そこにあった砂文字や想い出を隠し始めている・・・、そんなうら寂しい別れの曲ですが、メロディはどこまでも大らかです。

●「草千里」(阿蘇・九州)
草千里のあの広い情景の中から、風と共に聞こえてきそうな曲です。最後の「くさせんりがはま」と遠く歌が遠のいてゆく感じが阿蘇の大自然を表現して余りあります。

●「安曇野」(長野・中部)
一度あの安曇野の綺麗な景色を見た後では「時の流れも止まったような」「夕日が染めてゆく道祖神」「心の町です安曇野」の文章がいかに安曇野にぴったりとはまっているかがよおくわかります。
最後に訪れてもう10何年経っていますが、今も安曇野があの頃と同じ安曇野でありますように。「あなたに返事をもって帰ります。」日本全国12カ所を巡った旅は、恋人への幸せな返事と共に街に帰ってゆきます。

2008年 10月22日、キングレコードからCDキングアーカイブシリーズ22「青春の旅〜日本の抒情」がリリースされました。    復刻を強く希望していたこのアルバム、私自身キングレコードの復刻希望に嘆願していました。作詞家木下龍太郎さんの追悼の意味を含めての発売になりました。写真はレコード盤(下)とCD盤(上)を並べてみました。